LEDに見る半導体のバンドギャップ設計

化学

LED(発光ダイオード)がなぜ光るのか、そしてその色がどう決まるのか―実はこの秘密は半導体の「バンドギャップ」という性質にあるんです。ここでは、難しい専門用語をできるだけ避けながら、LEDがどのように光るのかを見ていきましょう。

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半導体って何?

まず、半導体とは電気を通す性質が金属と絶縁体の中間にある材料です。代表的な例として、シリコンやGaN(窒化ガリウム)などがあります。LEDに使われる半導体は、実はとても特別な「電子の世界」を持っています。

バンドギャップってどういう意味?



電子は、原子の中で決まったエネルギーの「段階(レベル)」にしか存在できません。半導体では、電子が主に2つのエネルギーのグループに分かれています。

価電子帯

普段、電子が落ち着いている低いエネルギーの領域

伝導帯

電子が自由に動ける高いエネルギーの領域

この2つの間にあるエネルギーの差をバンドギャップと言います。バンドギャップが大きいと、電子が普段の状態(価電子帯)から飛び出して、自由に動く(伝導帯に上がる)のにたくさんのエネルギーが必要になります。

LEDと「励起」と「光の放出」

LEDでは、電気を流すと電子にエネルギーが与えられます。これで電子は価電子帯から伝導帯へと「励起」されます。励起された電子はエネルギーを持って不安定な状態ですが、すぐに元に戻ろうとします。この時、電子が下の段階に落ちるときに、余分なエネルギーをとして放出するのです。

ここで大切なのは、バンドギャップの大きさが光の色を決めるという点です。

大きなバンドギャップ

落ちるときに多くのエネルギーが放出され、青や紫といった高エネルギーの光(短い波長)になります。

小さなバンドギャップ

放出されるエネルギーが少なく、赤やオレンジといった低エネルギーの光(長い波長)になります。

このように、LEDの材料として使われる半導体は、どの色の光を出すかをバンドギャップの大きさで決めています。たとえば、青いLEDには大きなバンドギャップを持つGaNが使われ、赤いLEDには比較的小さなバンドギャップの材料が使われることが多いです。

材料設計の工夫



LEDの研究では、バンドギャップの大きさを「設計」することがとても重要です。

ドーピング

半導体に別の元素を少量加えることで、電子の動きやエネルギーレベルを調整します。

合金化

複数の材料を混ぜることで、バンドギャップの大きさを細かく調整し、希望する光の色を実現します。

この工夫によって、私たちはスマートフォンやテレビ、車のライトなど、様々な場面で使われるカラフルで高効率なLEDを手にすることができるのです。

まとめ

LEDが光る仕組みは、半導体の電子が「励起」され、バンドギャップというエネルギー差を埋めるために光を放出するというシンプルな現象に基づいています。

  • バンドギャップ:電子が自由に動ける伝導帯と、普段いる価電子帯とのエネルギー差。
  • 励起と光の放出:電子が高いエネルギー状態に移動し、元に戻る際に光としてエネルギーを放出する。
  • 材料設計:ドーピングや合金化を用いて、希望する光の色や効率を実現する。

この基本原理を理解することで、LEDの光り方だけでなく、さまざまな電子デバイスがどのように動作するのか、科学の面白さを感じる一助になるはずです。

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