スパッタリング装置の原理について説明します。

化学

スパッタリングは、物理的気相蒸着(PVD: Physical Vapor Deposition)の一種であり、真空中で材料を薄膜として基板上に堆積させる技術です。このプロセスは以下のステップに分けられます。

 



  1. 真空チャンバー: まず、装置内のチャンバーを高真空状態にします。真空状態は、不要なガスや分子が除去され、プラズマが安定して生成されやすい環境を作り出すために必要です。
  2. ガスの注入: 次に、アルゴンガスのような希ガスをチャンバー内に導入します。このガスは、後のステップでプラズマを形成するために使用されます。
  3. プラズマ生成: 高周波(RF)や直流(DC)の電源を使ってガス中に電界を発生させると、ガス原子がイオン化してプラズマが生成されます。このプラズマ中のイオンは、電場によって加速されます。
  4. スパッタリング: 加速されたイオンがターゲット材料に衝突すると、そのエネルギーによってターゲット材料の表面から原子や分子が弾き出されます(スパッタされます)。この現象をスパッタリングと呼びます。
  5. 薄膜形成: スパッタされた原子や分子はチャンバー内を飛び、基板に到達して薄膜を形成します。
  6. スパッタリング装置で成膜する際には、一般に数パスカル(Pa)のガス圧が必要ですが、1Pa未満の極低圧で成膜を行いたい場合には以下のような手順があります。
  • プラズマの発生: まず、3Pa程度という比較的高い圧力でプラズマを発生させます。この圧力ではプラズマが安定しやすいため、プラズマの生成を助けます。
  • 圧力調整: プラズマが発生した後、チャンバー内の圧力を成膜したい低圧(例えば1Pa未満)まで下げます。このとき、プラズマはすでに発生しているため、低圧下でも維持することが可能です。
  • 成膜プロセスの続行: 圧力が低下した状態でスパッタリングを続け、目的とする薄膜を基板上に形成します。

このように、スパッタリング装置は、プラズマと真空技術を利用して精密な薄膜を形成するために広く使用されています。電子部品、光学コーティング、装飾用コーティングなど、様々な産業分野で重要な役割を果たしています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました